「ただ更新する」は危険?商標権の更新期にやっておくべき「事業と権利のズレ」解消術とは?


商標登録していて商標権の更新時期になったとき、担当者がまず確認するのは更新の手続期限と更新の費用でしょう。ただ、このとき「更新する」「しない」だけを決めると、事業での使用範囲と権利の内容がずれたままになることがあります。
- 商標登録の対象とした商品・サービスを、今も自社サイト等で事業に使用しているか
- 数年前に始めた新サービスは、その登録の範囲に入るのか
- 使わなくなった名前を、今後また使う予定があるか
更新前に必要なのは、登録簿の一覧を眺めることだけではありません。現在の事業で名前が使われている商品・サービスの範囲と、次に広げたい商品・サービスを並べ、残す権利を経営判断として決めることです。また、事業に足りない商品・サービスの範囲を補完するためのアクションの要否を決めることです。
1.まず、満了日と登録の内容を確かめる
商標権の存続期間は、設定登録の日から10年です。商標法第19条は、更新登録の申請によって存続期間を更新できると定めています。申請期間は、商標法第20条第2項により、満了前6か月から満了日までです。期限に近づいた時点で、登録番号、権利者、満了日、登録商標、指定商品・指定役務を一件ずつ確認してください。
会社で長年使っている名称でも、商標権者が現在の会社と違う場合があります。事業承継や社名変更、グループ会社間の移管があったなら、商標登録上の名義を確認します。担当者の手元にある古い登録証でなく、現在の登録情報を入手してください。
期限を過ぎてから対応できる場合もありますが、割増登録料が必要になるなど別の条件が関わります。「あとで何とかなる」と考えるのはリスクが大きく、通常の申請期間中に手続を終えることが大切です。満了日が近い、または過ぎている場合は、弁理士へ早めに相談してください。
2.登録した名前が、どこで使われているかを見る
次に、登録商標が事業の資料等でどのように使用されているかも確認します。商品ページ、包装、カタログ、見積書、販売店の掲載、サービスの申込画面。どこで顧客がその名前に出会うかを確認します。社内で親しまれている通称ではなく、実際に顧客へ示している表記を見るのが重要です。
たとえば、10年前に部品シリーズ名として登録した名称が、今は加工技術を説明するサービス名として使われているかもしれません。逆に、旧商品の名称は使っていなくても、保守部品の案内や既存顧客との契約に残っていることがあります。「売上がないから不要」と即決せず、誰に何を示す名前なのかを確かめます。
3.次の事業で必要な範囲は、更新と分けて考える
更新は、登録済みの商標権をさらに維持するための手続です。新商品や新サービスを始めたからといって、更新するだけで、その新しい事業に必要な権利範囲まで自動的に増えるわけではありません。ここを一緒にしてしまうと、「登録があるから大丈夫」と思ったまま新事業を公表するおそれがあります。
製造業なら、登録時は装置の名称だったものを、いまは保守サービスの名称にも使いたい場面があります。新しい用途を予定しているなら、既存登録の指定商品・指定役務と事業計画を見比べ、別の出願や調査が必要か検討します。似た名前を他社が使っているかの確認も、今後使う商品・サービスを前提に行います。
商標の見直しと同時に新しい製品の形状や技術を発表する予定があるなら、特許権・意匠権で守りたい部分は公開前に出願してください。商標の更新手続と、技術・デザインの公開前確認は別の判断です。発売日の会議でまとめて処理しようとせず、それぞれの期限を先に確認します。
4.残すか手放すかは、名前ごとに理由を決める
商標の一覧を前にすると、「念のため全部更新する」か「使っていないから一括でやめる」かに振れがちです。決める単位は、名前ごとの事業上の役割です。
- 主力商品や継続サービスで使い、顧客の指名につながっている名前
- 現在は販売を止めていても、保守や再発売で使う予定が具体的にある名前
- 事業終了後に使う予定がなく、他の名称へ移行済みの名前
この三つを分け、売上だけでなく、顧客からの呼ばれ方、販売店の表示、今後の事業計画も一緒に見ます。二番目の名前は、予定の時期と担当者まで書けるかが判断材料です。三番目の名前は、カタログや保証書、既存の契約に残っていないかを確認します。どちらも、更新しないと決める前に権利上の影響を確認してください。
更新費用の節約だけを結論にしないことも重要です。長く使った名前には、顧客が商品を見つける手がかりや、取引先が品質を思い出す手がかりが積み重なっています。その名前を手放す判断なら、どの表示をいつ変え、顧客へどう知らせるかまで決める必要があります。
5.更新判断を、年に一度の管理へつなげる
満了日直前の会議だけで過去10年を振り返るのは難しいものです。更新を終えたら、登録番号と期限だけでなく、事業で使う名前、使う商品・サービス、担当部署、使用資料の所在を一つの台帳に残します。新商品を出した時やブランド名を変えた時に、その台帳も見直します。
年に一度、営業や商品担当に「まだ使っていますか」と聞くだけでは、販路ごとの表示は拾いきれません。代表的な商品ページ、販売店資料、契約上の名称を確認し、名称の変更があれば知財担当へ伝える流れを決めます。更新の通知を受ける人と、事業の変更を知っている人が違う会社ほど、この連絡が役立ちます。
プロソラでは、事業の内容や今後の展開、商標の使い方を踏まえた商標の相談を受けています。更新期限だけでなく、現在の使用と次の事業に権利が合っているか迷う場合は、登録情報と実際の表示を持って弁理士に相談してください。
6.まとめ:更新する権利を、今の事業から選ぶ
商標権の更新は、10年前の登録をそのまま繰り返す作業ではありません。満了日を確認したら、実際に使う名前、登録された商品・役務、次に始める事業を同じ机に並べてください。残す理由と、別に調査・出願する必要がある範囲が見えてきます。期限が迫っている登録ほど、経営上の判断と手続上の確認を分けず、早めに進めましょう。
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