社長が行けば決まるのに、社員だと止まる。決め手を記録に残す

質問

社長が行けば決まるのに、社員だと止まる。決め手を記録に残す

質問

回答
回答
目次

1.最初の営業を社長が担うのは自然なこと

下請け脱却や自社商品販売を進める会社では、最初の営業を社長自身が担うことが多くなります。現場を知っていて、取引先との距離も近く、価格や納期の事情もその場で説明できるからです。

  • 社長が行けば決まるが、社員だけでは商談が止まる
  • 先代からの取引先に、次の担当をどう紹介すればよいか迷う
  • 顧客との関係が社長の記憶に残っていて、会社の記録になっていない

属人化をなくすことは、社長の存在感を消すことではありません。社長が積み上げてきた信用、顧客の本音、選ばれた理由を、次の担当が使える形にしておくこと、社長の言葉で売れていた理由を、会社として言える言葉に変えることです。

2.売れた理由は、社長の頭の中にある

(1)商談結果より、決め手を記録する

営業記録というと、訪問日、担当者名、見積金額、受注可否だけを書きがちです。しかし、次の担当が本当に知りたいのは「なぜその会社が買ったのか」です。

例えば、短納期に助かったのか、図面の読み替えが早かったのか、少量でも相談できたのか、社長の現場説明に安心したのか。決め手が違えば、次回の提案で出す言葉も変わります。

社長の頭の中にある「この会社は価格より納期を見ている」「この担当者は品質事故を嫌う」「この用途では見た目より耐久性を気にする」といった判断を、顧客別に短く残します。ここが残ると、次の担当は単に過去の見積をなぞるのではなく、顧客の買い方に合わせて話せます。

(2)断った仕事こそ書き残す

属人化している営業では、社長だけが「受けてよい仕事」と「受けない方がよい仕事」を見分けていることがあります。これを引き継がないまま担当を替えると、利益の薄い案件や、品質トラブルになりやすい案件まで受けてしまいます。

記録するのは、成功案件だけではありません。値引きが大きすぎた案件、図面変更が続いた案件、検収条件が曖昧だった案件、納期が合わなかった案件も残します。

「なぜ断ったのか」「どこまでなら受けられたのか」「次に相談が来たら何を先に確認するのか」を書いておくと、営業判断が社長の勘だけに戻りにくくなります。

3.次の担当へ渡す営業メモを作る

(1)最初の一言をそろえる

取引先へ次の担当を紹介するとき、名刺だけ渡しても関係は引き継がれません。相手が安心するのは、「この人も、うちの事情を分かってくれている」と感じたときです。

そのために、顧客別の営業メモには、最初に伝える一言を残します。例えば、「前回は短納期対応で評価いただいた会社です」「品質基準のすり合わせを大切にされる担当者です」「量産前の試作相談から始まった取引です」といった短い文です。

この一言は、社内向けの引き継ぎにも、顧客への挨拶にも使えます。社長の経験を、次の担当が自然に口にできる文章へ変えることがポイントです。

(2)価格、納期、品質の譲れない線を残す

社長が営業をしている間は、価格交渉や納期調整をその場で判断できます。しかし、担当を替えた後に線引きが見えないと、相手に合わせすぎて利益や品質を崩しやすくなります。

  • 値引きできる条件と、値引きしない条件
  • 短納期を受ける場合に必要な追加費用や前提
  • 品質基準、検査条件、責任範囲
  • 図面、仕様、試作品、写真をどこまで外へ出してよいか

これらは、営業資料にも契約前確認にもつながります。顧客に伝える価値を強くするほど、同時に守る情報の範囲も決める必要があります。

4.ノウハウの守り方

(1)顧客リストと営業ノウハウは出す範囲を決める

営業メモには、顧客名、担当者、連絡先、相談履歴、価格条件、未公開の用途情報が入ります。これは営業上の大切な情報であり、同時に個人情報を含むこともあります。

顧客情報を社内で共有する場合は、利用目的、閲覧できる人、外部持ち出し、退職時の扱いを決めます。個人情報保護委員会の個人情報保護法ガイドライン通則編でも、安全管理措置や委託先の監督などが整理されています。

独自の営業手順、見積の考え方、顧客別の交渉履歴は、営業秘密として扱うかどうかを決めます。営業秘密と認められるには、秘密として管理していること、事業に役立つこと、外部に知られていないことが要ります(経済産業省の営業秘密に関する情報)。社内で共有を広げるほど、「これは秘密だ」と分かる表示と、見られる人の制限が要ります。

5.引き継ぎは、社長を急に外さない

(1)同席、説明、任せる範囲を分ける

下請け脱却や事業承継の場面では、いきなり社長を営業から外すと、顧客も社員も不安になります。最初は社長が同席し、次に担当者が説明し、最後に社長が出る場面を絞る方が現実的です。

例えば、初回の挨拶は社長、仕様確認は担当者、価格と契約条件の最終確認は社長同席、次回以降の進行は担当者というように分けます。この段階を営業メモに残すと、顧客にも社内にも無理が出にくくなります。

ここでやるのは、社長を営業から外すことではなく、社長が出るべき場面を絞ることです。それ以外を、少しずつ会社の仕組みへ移していきます。

(2)取引先の世代交代にも備える

自社だけでなく、取引先の担当者や購買責任者も世代交代します。先代同士の信頼で続いていた取引でも、次の担当者はWeb、資料、比較表、実績、品質記録を見て判断することがあります。

だからこそ、社長の説明を、会社案内、商品ページ、営業資料、事例、見積前の確認項目へ移しておきます。新しい担当者が見ても、なぜこの会社に頼むのかが分かる状態にすることが、次の営業を楽にします。

選ばれてきた理由を、次の世代の顧客にも伝わる形にしておく。その理由を支える名前、記録、顧客情報、ノウハウは、不用意に外へ出さない。この両方がそろって初めて、社長の信用は個人の記憶から会社の資産に変わります。

6.まとめ:勘を、引き継げる形にする

社長しか売れない取引を引き継げるようにするには、次の順番で進めます。

  • 顧客が買った理由と、買わなかった理由を残す
  • 次の担当が最初に話す一言を作る
  • 価格、納期、品質、公開情報の譲れない線を決める
  • 屋号、商品名、サービス名を商標の入口で確認する
  • 顧客リストと営業ノウハウの閲覧範囲を決める

属人化を解消する目的は、社長の魅力を薄めることではありません。社長が築いた信用を、社員が再現でき、顧客が安心して受け取れる形にすることです。プロソラでは、会社の強みを言葉に落とす作業からご一緒します。屋号や顧客情報、営業ノウハウをどこまで社内で回してよいかも、同じ場で整理できます。

サービス詳細は以下もご覧下さい

お気軽にお問い合わせください。

よろしければシェアをお願いします!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中小企業・スタートアップ企業の事業に関する知的財産の問題点とその解決策を「わかりやすく」伝える専門家。お客さまの知的財産に関する課題解決に必要な「最適な事業判断」を行っていただく為のサポートを提供しています。

お気軽にお問い合わせください。

目次