情報漏洩やトラブルを防ぐ!共同開発の成果発表で「公開前に絶対に詰めるべきこと」とは?


大手企業との共同開発で成果が見え始めると、自社の実績として発表したくなります。ただ、次のことが決まらないまま原稿を作り始めていないでしょうか?
- 相手企業の名前を見出しに載せてよいか。
- 試験結果のどこまでを数字で示せるか。
- 出願や相手方の発表と、どちらを先にするか。
共同開発の発表では、文章の上手さより先に、両社で公表する事実、公開する日、確認する人を決めることが必要です。特に、技術の中身が伝わる資料は、発表後に秘密へ戻せません。発表原稿を作る前に、契約、出願、説明できる成果を順に確かめましょう。
1.「共同開発を始めた」と「成果が出た」を分ける
共同開発の開始を知らせる発表と、試験結果や製品化を知らせる発表では、示せる事実が違います。まだ開発中なら、共同開発の目的と両社の役割を伝えられても、性能や量産の見込みを発表するのは難しいです。発表の目的を「取引先に新しい用途を知ってもらう」「採用候補の企業へ検証の進捗を伝える」のように一つ決め、そこに必要な事実だけを選びます。
たとえば、金属部品の加工技術を大手メーカーの装置に試す段階なら、「共同で評価を始めた」と「耐久試験を終え、採用が決まった」は別の話です。実験室で一回得た測定値を、量産品の性能として書いてはいけません。試験の条件、回数、測定した担当者、相手企業が承認した表現を照らし合わせます。
共同開発の事実そのものも、必ず公表できるわけではありません。契約前の秘密保持の取り決め、共同開発契約、両社の発表方針を確認し、社名やプロジェクト名を出す前に相手方の同意を得る必要があります。「名前を伏せれば話してよい」と担当者だけで判断しないでください。
2.契約の発表条件を担当者へ伝える
契約書に「成果の公表は事前に協議する」とあっても、誰へ何日前に原稿を送り、返答がない時にどうするかまで決まっていなければ、予定日に発表できません。まず、契約にある公表の対象、通知方法、承認者、回答期限を拾い、両社の広報担当と開発責任者が読める一覧にします。契約に書かれていない点は、勝手に補わず相手と協議します。
発表の可否だけを契約から抜き出して判断しないことも大切です。共同開発の契約には、成果の帰属、開発費用の分担、自社が別の販売先にも成果を使えるか、秘密情報と第三者との同種開発の扱い、契約終了後の利用や改良発明の扱いが関わります。どの成果を自社実績として示せるかは、これらの条件と切り離して決められません。
最初に秘密保持契約を結び、開発に進む時は共同開発契約で役割と成果の扱いを決め、実際の製造・販売や許諾を始める時は成果利用の条件を別途決める。この段階ごとの取り決めを確認したうえで、今回の発表がどの段階に当たるかを明らかにします。相手企業のひな形に公表条項がない場合も、発表する予定があるなら契約交渉の時点で話題にしてください。
3.出願より先に技術を公開しない
プレスリリースには、技術の特徴を詳しく書きたくなるものです。しかし、特許で守りたい発明や意匠で守りたい形を出願前に公開すると、新規性を失い、権利を取れなくなることになります。公開後の例外手続があっても、満たすべき条件と必要な手続があります。また、海外で同じ扱いを受けられるとは限りません。例外を前提にすることなく、発表より前に弁理士と出願の要否を決めます。
原稿を確認する時は、「新しい構造」「寸法や加工条件」「試験片の写真」「図面」「実際の製造方法」が読者にどこまで分かるかを見ます。言葉で伏せても、写真から構造が推測できる場合があります。一方、技術の詳細を伏せたまま、対象とする用途や顧客にとっての利点を伝えられることもあります。開示する内容と、その内容を示す目的を一つずつ対応させてください。
両社で作った成果のうち、出願するもの、秘密として管理するもの、発表してよいものを区別します。この判断は「技術を出すか隠すか」の二択ではありません。何を権利化し、どの成果を公表して取引先へ示すかを、発表日より前に決める必要があります。
4.数字、写真、社名を両社で一つずつ確認する
「従来比で性能が向上」「不良率を低減」のような表現を使うなら、比較対象と測定条件を示せるか確認します。測定条件が違う二つの数値を並べて成果に見せたり、一部の試験結果をすべての用途へ広げたりしないでください。まだ顧客の装置での評価が終わっていないなら、その段階までしか書けません。
写真にも確認が要ります。試作品の背景に相手企業の設備や未公開の部品が写っていないか。画面の端に図面番号や顧客名が残っていないか。写真を切り抜く場合も、加工後の画像を相手企業へ見せて確認を取りましょう。相手のロゴマークや社名を載せるなら、表記と掲載場所を指定して承認を受けます。
発表文には、両社の役割も正確に書きます。「共同開発」と一語でまとめても、自社が提供したのは材料なのか、加工方法なのか、評価設備なのかで意味が変わります。相手が担った検証まで自社の成果のように読めるような文章は避ける必要があります。
5.発表日の前後まで決めておく
両社が同時に発表するなら、公開日時、使うタイトル、相手サイトへのリンク、問い合わせ窓口を合わせます。一方だけが先に公開すると、相手がまだ伝えたくない顧客や取引先にも情報が届きます。相手の承認が遅れた時は誰が延期を決めるかも、先に決めておきましょう。
発表後に営業へ問い合わせが来た時の返答も用意します。「試作品の提供はいつからか」「他社でも使えるか」「性能を証明する資料はあるか」と聞かれた場合、発表文以上の情報をその場で返答してしなわないようにするためです。共同開発を知らせることと、量産品の供給や性能を約束することは違います。回答できる項目、両社で相談してから答える項目、まだ答えられない項目を分けておきます。
発表後は掲載された本文と写真を保存し、問い合わせで繰り返し聞かれたことを記録します。次の発表を考える時には、取引先が何に関心を持ったかが分かります。ただし、新しい測定値や用途を追加する時は、最初の承認を流用せず、改めて両社で確認してください。
6.まとめ:発表原稿の前に両社の合意を残す
共同開発の成果発表では、まず「どの段階の、何を、いつ公表するか」を両社で決めます。そのうえで契約の公表条件を確認し、出願前の技術、根拠の足りない数値、承認を得ていない社名や写真を原稿から外します。準備ができれば、成果を示しながら次の商談に必要な情報を伝えられます。
プロソラでは、他社との事業共創に伴う知財活動と技術契約を支援しています。共同開発の発表内容や公開時期で迷う時は、発表案と現在の契約、出願を考えている技術を持って相談してください。
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