商標の調査にどれくらい費用がかかりますか?
新しい商品のネーミングについて商標が取れるか調査したいです。調査の費用はいくらかかりますか?
商標の調査については、
・商標調査を自分で行っても問題ないか知りたい。
・商標調査の費用がどのように決まるか知りたい。
・商標調査の費用を抑えて問題ないか知りたい。
と思うことがありますよね。以下に商標調査の考え方と費用について解説します。
1.商標調査の目的
商標を登録できるか確認するため
商標調査によって、新しいネーミングの商標をとれそうか確認できます。すでに特許庁に同じか似たような他人の商標が登録されている場合(この他人の商標を先行登録商標といいます)は、特許庁の審査を通過できません。
こうなると、特許庁への出願費用と時間が無駄になってしまい、追加で別の商標を出願する費用と時間が必要になってしまいます。
他社の商標権を侵害しないようにするため
先行登録商標が存在している場合に、商標をビジネスで使用すると、先行登録商標の権利者から訴えられる可能性がでてきます。訴訟になると高額な費用が必要になります。
その他
以上のように、商標調査はまず先行登録商標が存在していないか確認するために行います。
この他にも、特許庁の審査を通過するために必要な条件が30ほどあり、これらを踏まえて商標調査を行う必要があります。
2.商標調査の方法
商標調査を行うには次のいくつかの方法があります。
自分で調査する
特許情報プラットフォーム・J-PlatPatを使えば、自分で商標調査を行えます(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)。誰でも無料で使えます。当サイトでも、J-PlatPatの使い方を、J-PlatPatの操作方法で解説していますので、参照してください。
自分で調査する場合のメリットは、調査費用が無料であることです。
逆に、デメリットは、自分が調査するための時間が必要であること。手慣れていない場合は時間がかかります。その調査の時間を本業に使った方がよい場合もあるでしょう。調査結果に確信がもてないことも多いと思います。
また、先行登録商標を発見した場合に、自分の商標が登録できそうか判断することが難しいということもあります。この点には注意が必要です。
オンライン出願サービスを使う
オンライン商標出願サービスを提供している事務所があります。これら出願サービスには、無料の商標検索ページがあります。一般に機械検索で無料ですが、その後の詳細調査は有料が多いです。また、商標出願手続のサービスへの入り口となっています。
オンライン検索サービスを使うメリットは、サイト上で簡単に入力できて直ぐに検索結果が出力されるということです。
オンライン検索サービスを使うデメリットは、機械検索の為に精緻な検索ができないこと、詳細調査は有料が多いことなどです。商標出願の後の追加料金が高い場合もあります。
弁理士に依頼する
商標の専門家である弁理士に商標調査を依頼することができます。
商標に強い弁理士は、J-PlatPatだけでなく専門家向けの有料の商標検索サイトも使って詳細な商標調査を行います。
弁理士に依頼する場合のメリットは、商標の専門家である弁理士が調査を行い商標の登録可能性も判断するため、安心感が高いということです。先行登録商標の判断はグレーな場合が多く、その濃淡を判断することは弁理士でなければ難しいのが現実です。
弁理士に依頼する場合のデメリットは、弁理士が調査を行い専門知識・経験が必要な判断を行うため、上記の2つの方法よりも費用が高くなるということです。
3.商標調査のステップ
商品・サービスの特定
特許庁は世の中にある商品・サービスごとに、英数字5桁の「類似群コード」を整理しています。例えば、「リュックサック」の類似群コードは「21C01」です。商標を使おうとする商品・サービスについて「類似群コード」を特定する必要があるのです。
実務的に問題となる重要な点
実務的に問題となる重要な点。それは、商標を使う商品・サービスの類似群コードを漏らさないこと。例えば、商品「ヘアシャンプー」の類似群コードは「04A01」、商品「ヘアーリンス」は別の類似群コード「04C01」です。
この場合、「ヘアーリンス」の類似群コードを漏らしてしまうと、「ヘアーアリンス」の先行登録商標を見落としますし、商標出願でも漏れてしまいます。その結果、「ヘアシャンプー」に商標登録できても、「ヘアーリンス」に商標を登録できていない、場合によっては他社の商標権を侵害してしまった、となってしまうのです。
類似群コードの特定の難しさ
自分が考える商品・サービス名と、特許庁の類似群コードの商品・サービス名が一致しないことが多く、漏れなく類似群コードを特定するのは、慣れていないと意外に難しいのです。
将来の商品・サービスも考慮
現時点で考えている商品・サービスだけでなく、自分のビジネスの将来の発展も考えて商品・サービスに一致する類似群コードを特定する必要があります。
将来、新しい商品・サービスで同じ商標を使おうとする場合に、追加で商標出願する必要がでてくることになり、その時点で、特許庁に申請しても先行登録商標があって登録できないということもありえます。
専門家によるヒアリング
以上のように類似群コードの特定は微妙なことも多いので、商標の専門家である弁理士がクライアントにしっかりヒアリングして検討し、場合によっては弁理士から適切な類似群コードを提案することが望ましいといえます。
商標の特定
ビジネスで実際に使用する商標を特定する必要があります。明朝体やゴシック体などの標準的な文字なのか、デザイン化した文字なのか、文字と図形を一体にしたものか、などです。
特許庁に商標出願する商標は原則として、実際に使用する商標とする必要があります。よって、商標調査でもその点を考慮して行う必要があるのです。もし商標を登録しても、現実に使用している商標が同じでない場合は、商標登録が取り消されてしまうという商標法の制度がありますので、注意が必要です。
商標検索
商標と類似群コードが特定できたら、検索サイトを使って商標調査を行います。ここで、J-PlatPatなどの商標検索サイトを使います。ネーミングの場合、その「読み方」を中心にしてネーミングの「意味」や「見た目」も考慮しながら検索を行います。
ここでどれだけ多様な観点で検索できるかで、先行登録商標を発見できるかどうかが決まります。
また、上記した商品・サービスの特定、商標の特定に漏れがあると、必然的に調査結果にも漏れがあることになりますので、注意が必要です。
先行登録商標に関する判断
自分の商標(ネーミング)と、発見した先行登録商標が類似かどうかを判断する必要があります。この類似の判断は、明確に〇×がつく場合の方が少なくグレーな場合の方が多いです。その濃淡から商標出願しても登録できそうかを判断する必要があるのです。
このため、簡単な機械検索の結果だけで商標出願に進めることは避けた方がよいです。
その他の調査
上記の先行登録商標の調査の他にも、種々の観点で追加の調査が必要になります。例えば、特許庁に登録されていないが世の中で有名になっている商標、というものもまれに存在します。このような商標と同じか類似であれば商標登録ができないのです。これはgoogle検索したり同業者間でよく知られた言葉がないか確認します。
また、商標法の観点では何ら問題がない場合でも、世の中で知られているネーミングと同じような商標(例えば、有名な映画タイトルと同じネーミングなど)を商標出願して、ネット上で炎上してしまうようなこともあります。そのようなリスクがないかを検討しておくことも必要なのです。
4.商標調査の費用
商標登録までの費用
商標を登録するまでに、商標調査 ⇒ 商標出願 ⇒ 特許庁での審査 ⇒ 登録 のプロセスとなります。出願、登録には、特許庁に支払う印紙代が必要です。また、弁理士に依頼する場合、各段階での手数料が発生します。
調査の費用
商標調査の費用は事務所によって様々ですので一概に言えませんが、概ね次のような価格設定があります。
類似群コード単位の価格
商標調査は類似群コードごとに行うため、この類似群コードを費用の単位にしている場合が多いといえます。
区分ごとの価格
類似群コードをもう少し大きくまとめた区分(全部で45の区分)を単位に設定している場合もあります。
調査に要した時間単位での価格
現実に調査に要した時間単位としている場合もあります。
複数の商標を調査する場合
上記は何れも1商標あたりとしている場合が多く、複数の商標がある場合は、その商標の数に比例した金額になることが多いです。
統計データ
統計データでは、1商標の調査で1類似群コードあたり、5千円~4万円となっています。
類似群コードが複数になることが多いのでイメージとしては、1件の調査で数万円から数十万円というところです。
なお、事務所によっては、調査費用を無料として出願費用や成功報酬を高く設定している場合などもあります。
5.まとめ
商品・サービスのネーミングを考えたときは、商標出願や商標使用開始の前に、しっかり商標調査を行うことが、後々の費用がかからない為にも必須です。
商標調査の費用は、自分での調査が安いですが、上記したように商標調査の各ステップを確実に行えないことも多くその分リスクも大きいです。
商標に関する判断は専門知識・経験が必要であるため、商標の調査から登録・使用までのトータルの費用を考えた場合、弁理士がクライアントからしっかりヒアリングする事務所に依頼されることをお勧めします。
当事務所でも商標調査を受任することが可能です。調査費用は、当事務所の料金表を参照してください。