セグメンテーションは必要?中小企業のターゲティング判断基準

質問

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新規事業や新サービスを考えるとき、「できるだけ多くの人に売りたい」と考えるのは自然です。しかし、顧客を広く取りすぎるほど、言葉も商品設計もぼやけやすくなります。

  • 誰に向けた商品なのか、社内で説明が揃わない
  • ターゲットを絞ると売上機会を逃すのではないかと不安になる
  • セグメンテーション、ターゲティング、ペルソナの違いが曖昧なまま進んでいる

結論から言いますと、中小企業の新規事業では、最初から全市場を狙うよりも、「まず誰のどの困りごとに選ばれるか」を決める方が現実的です。

目次

1.セグメンテーションとターゲティングの違い

(1)市場を分ける作業と、狙う相手を決める作業

セグメンテーションは、市場をいくつかのまとまりに分ける作業です。業種、規模、地域、利用場面、困りごと、購入頻度、価格感度などで分けると、自社の商品や技術がどこで役に立つのかが見えやすくなります。

一方、ターゲティングは、分けた市場の中から「まず狙う相手」を決める作業です。分けただけでは事業は動きません。どの顧客に、どの価値を、どの言葉で届けるのかを選ぶところまで進めて、初めて営業資料、商品名、Webページ、展示会トークが具体化します。

(2)ペルソナは最後に細かくする

よくある失敗は、いきなり細かなペルソナを作り込むことです。年齢、性別、趣味、家族構成まで詳しく決めても、実際の購買理由と関係が薄ければ、現場では使えません。

順番としては、まず市場を分け、次に狙う顧客群を決め、その後で営業や商品開発に使える範囲でペルソナを具体化します。中小企業にとって重要なのは、きれいな人物像を作ることではなく、「その人がなぜ今、自社を選ぶのか」を説明できる状態にすることです。

2.顧客を絞る前に見る3つの判断軸

(1)困りごとが強いか

最初の判断軸は、顧客の困りごとが強いかどうかです。「あれば便利」ではなく、「このままだと困る」「今の代替手段では足りない」と感じている相手ほど、新規事業の初期顧客になりやすいです。

例えば、同じ業務効率化サービスでも、「少し楽になる」程度の顧客より、納期遅れ、品質クレーム、担当者不足で明確に困っている顧客の方が、検討が前に進みやすいでしょう。顧客セグメントは人口や会社数の大きさだけでなく、困りごとの切実さで見る必要があります。

(2)自社が勝てる理由があるか

次に、自社がその顧客に選ばれる理由を見ます。市場規模が大きくても、大手や既存競合と同じ土俵で価格勝負になるなら、中小企業には厳しい戦いになります。

見るべきなのは、自社の技術、現場経験、地域性、納期対応、カスタマイズ力、経営者の原体験などが、その顧客の困りごとに直接効くかどうかです。ここで「なぜ他社ではなく自社か」が言えない場合は、ターゲットをさらに絞るか、提供価値を見直す必要があります。

(3)小さく検証できるか

三つ目は、小さく検証できるかです。顧客候補に話を聞ける、試作品を見せられる、限定販売できる、既存顧客の一部に提案できるなど、早く反応を見られる顧客群は、初期ターゲットとして扱いやすいです。

逆に、意思決定者まで遠い、導入まで数年かかる、実証に大きな費用がかかる顧客群は、魅力的でも初期検証には向かないことがあります。最初のターゲティングでは、「理想の顧客」だけでなく、「学びを早く得られる顧客」も重視します。

3.絞り込みでよくある失敗

(1)業種だけで分けてしまう

「製造業向け」「飲食店向け」「医療機関向け」のように業種だけで分けると、顧客の困りごとがまだ広すぎることがあります。同じ製造業でも、試作に困っている会社、量産品質に困っている会社、採用に困っている会社、価格交渉に困っている会社では、響く言葉が違います。

業種は入口として使えますが、最終的には「どの場面で困る人か」まで落とすことが大切です。顧客の頭の中で「この場面ならこの会社」と思い出されるには、業種名よりも困りごとの名前を先に決める必要があります。

(2)売上規模だけで選んでしまう

大きな会社、大きな市場、大きな予算を持つ顧客は魅力的に見えます。しかし、初期の新規事業では、売上規模だけでターゲットを選ぶと、要望が大きすぎたり、価格交渉が厳しかったり、実績だけを求められたりすることがあります。

中小企業が見るべきなのは、売上の大きさだけではありません。自社の提案を試してくれるか、改善の声を返してくれるか、導入後の実績を使えるか、長く付き合えるかも重要です。最初の顧客は、売上先であると同時に、事業を磨く相手でもあります。

(3)絞った後に言葉を変えない

ターゲットを決めたのに、Webサイトや営業資料の言葉が「すべての企業に最適」「幅広い課題に対応」のままでは、絞った意味がありません。顧客を絞る目的は、断るためではなく、伝わる言葉を強くするためです。

例えば、「業務効率化」では広すぎます。「多品種少量の見積作成に時間がかかる町工場向け」「新規事業の初回商談で価値を説明しきれないBtoB企業向け」のように、顧客と場面を入れると、商品説明も相談導線も具体的になります。

4.ブランドの約束に落とし込む

(1)Who・What・Whyで一文にする

ターゲティングが決まったら、Who(誰に)、What(何を)、Why(なぜ他ではなく自社か)を一文にします。これは立派なスローガンを作る作業ではありません。社内で商品開発、営業、Web、展示会、採用説明を揃えるための基準文です。

例えば、「納期遅れに悩む小ロット製造業に、現場で使える工程見える化を、試作現場を知る自社の改善ノウハウで提供する」のように書けると、言葉の軸ができます。この一文があると、商品名、キャッチコピー、FAQ、導入事例の見せ方がばらばらになりにくくなります。

(2)広げる順番を決める

ターゲットを絞ることは、将来の市場を捨てることではありません。最初に勝ちやすい一点を決め、そこで実績、口コミ、改善ノウハウを作り、その後で周辺市場へ広げる順番を決めるという考え方です。

最初から全方位に見せると、顧客の印象に残りません。まず一つの困りごとで「ここなら相談できる」と思い出される状態を作り、その後に隣の困りごと、別業種、別地域へ広げる方が、中小企業には合っています。

5.公開前に確認したい商標・知財

(1)ターゲットに合わせた名前ほど先行確認が必要になる

顧客を絞ると、商品名やサービス名も具体的になりやすくなります。これは伝わりやすさの面では有利ですが、内容をそのまま説明するだけの名称は、識別力が無く商標登録できません。また、その名称を使用した場合に他社の商標権を侵害しないかの確認も必要です。

(2)検証で外へ出す情報を分ける

ターゲット顧客に小さく試す段階では、資料、試作品、デザイン、画面、技術説明、価格表などを外へ出すことがあります。このとき、顧客に価値を伝える情報と、社内に残すべき技術情報を分けておかないと、後で守りにくくなります。

特許権・意匠権を取得するためには、「新規性」が特許要件として求められます。特許や意匠で守りたい技術・デザインがある場合は、展示会、SNS、Web公開、限定販売より前に特許出願・意匠出願を検討することが基本です。営業秘密として残す情報は、資料名、閲覧者、共有範囲、持ち出し方法まで決めておきます。

6.まとめ:顧客を絞るほど、伝える言葉は強くなる

セグメンテーションは市場を分ける作業、ターゲティングは最初に狙う顧客を決める作業です。中小企業の新規事業では、広く見せるよりも、強い困りごとがあり、自社が勝てる理由があり、小さく検証できる顧客から始める方が進めやすくなります。

顧客を絞る目的は、売上機会を狭めることではありません。顧客の頭の中で呼ばれる場面を明確にし、商品名、説明文、営業資料、Webページ、知財確認の範囲を揃えることです。

プロソラでは、新規事業のターゲット整理、ブランドコンセプトの言語化、商品名・サービス名の商標確認、公開前の知財整理まで一体で支援しています。顧客をどこまで絞るべきか迷っている段階で、一度整理しておくことをおすすめします。

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この記事を書いた人

中小企業・スタートアップ企業の事業に関する知的財産の問題点とその解決策を「わかりやすく」伝える専門家。お客さまの知的財産に関する課題解決に必要な「最適な事業判断」を行っていただく為のサポートを提供しています。

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