商標検索は自分でできる?候補名を公開前に確認する手順


新しいサービス名や商品名を考えたとき、経営者の方からよく聞く不安があります。
- 候補名を思いついたが、すぐ公開してよいのか分からない
- ネット検索では見つからなかったので、このまま使ってよいと思っている
- 商標検索を自分でやってみたいが、どこまで確認すればよいか分からない
結論から言いますと、商標検索は自分でも入口の確認はできます。ただし、自分でできるのは「候補名を早めにふるい分ける」ところまでです。登録可能性や類似判断、どの商品・サービスの詳細分類で守るべきかの判断は、事業開始前に、商標に詳しい弁理士に確認した方が安全です。
中小企業の新規事業では、名前が決まるとチラシ、Webサイト、展示会資料、SNS、見積書、契約書へ一気に広がります。公開後に他社商標と近いことが分かると、作り直しの費用だけでなく、顧客に覚えてもらった名前に備わった信用まで失うことがあります。だからこそ、候補名がある程度絞れた段階で、商標について確認することが大切です。
1.商標検索は「文字列の重複チェック」だけではありません
(1)ネット検索と商標検索は見ているものが違います
Google検索やSNS検索で同じ名前が出てこないと、「この名前は空いている」と感じるかもしれません。しかし、商標の確認で見るべきなのは、同じ文字列がネット上にあるかだけではありません。似た読み方、似た見た目、似た意味合い、そして同じような商品・サービスで使われているかを確認する必要があります。
例えば、自社がオンライン相談サービスの名前を考えている場合、同じ文字列の飲食店名があるかどうかよりも、近い分野の相談業、教育、情報提供、ソフトウェア、広告支援などで似た商標がないかが重要になります。ここを見落とすと、事業開始後に「そんな会社名はネット検索で出なかったのに」という状態になりやすいのです。
(2)商標法は先に出願した者に権利を与える仕組みです
商標法第8条第1項は、同一又は類似の商品・役務について同一又は類似の商標出願が競合した場合、先に出願した者が商標登録を受けるという考え方を置いています。つまり、「先に使っているから大丈夫」と言えないのです。
なお、商標を使用して有名にした場合には「先使用権」が認められてそのまま使用を継続できる場合もありますが、多額の交渉や訴訟の費用がかかりますし、そもそも有名にするための莫大な広告宣伝費用ががかります。よって、中小企業が新規事業を立ち上げる段階では、争って守る前提で進めるより、早めに商標調査し、商標出願することが現実的です。ここが、ブランディングでの名前づくりと商標登録を分けて考えない方がよい理由です。
2.自分で確認するなら、まずJ-PlatPatを使います
(1)INPITが運営する検索サービスで候補名を調べる
商標検索の入口として使うのが、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営する特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」です。特許・実用新案・意匠・商標の公報情報や経過情報を無料で検索できます。商標については、商標の称呼などから出願・登録情報を確認できます。
最初は、候補の名称そのものを検索します。次に、読み方を変えた検索をします。カタカナ、ひらがな、ローマ字、略称、長音の有無など、顧客が口にしたときに近く聞こえる形をいくつか試すことが重要です。商標は同一だけでなく類似の範囲まで確認する必要があるのです。
(2)商品・役務の詳細分類(類似群コード)を外さずに確認する
商標は、名前だけでなく、何の商品・サービスに使うかとセットで考えます。これを指定商品・指定役務といいます。例えば、同じ「相談サービス」でも、経営相談、教育講座、ソフトウェア提供、広告支援、EC運営支援では、見るべき範囲が変わります。
自分で検索するときは、現在売る商品・サービスだけでなく、中長期的に広げたい商品・サービスも書き出してください。最初はオンライン講座だけでも、将来は診断ツール、顧問契約、教材販売、イベント運営へ広がるかもしれません。攻めの構想を先に整理しておくと、守る範囲を決めやすくなります。
この指定商品・指定役務の類似の単位を定めるのは、区分ではなく、その中に数十存在する詳細分類(類似群コード)です。自分のビジネスに照らして漏れなくこの詳細分類を特定する必要があります。この特定は、商標に詳しい弁理士に任せるのが安全です。
3.候補名を事業開始前に確認する3つの手順
(1)候補名を「本命・予備・説明名」に分ける
ネーミングの段階では、最初から一つの名前に決め切らず、複数の候補を維持した状態で商標検索を行うことが大切です。一つの名前だけに惚れ込んでしまうと、検索で近い商標が見つかったときに引き返しにくくなり、事業のスタートが遅れてしまいます。複数の選択肢を持ったまま商標調査を進めることで、手戻りのリスクを最小限に抑えられます。
この段階では、見た目が格好よいかだけで判断しないことが大切です。顧客がどんな困りごとのときに思い出す名前なのか、競合と比べて何を約束する名前なのか、従業員が説明しやすい名前なのかも確認します。名前はロゴより前に、選ばれる理由の入口になるからです。名前は事業のブランドコンセプトに基づいて作成するものなのです。
(2)「同一範囲」だけでなく「類似範囲」まで確認する
J-PlatPatで候補名を検索する際は、完全に一致する「同一範囲」の商標がないかを見るだけでは不十分です。商標権の効力は、見た目(外観)、読み方(称呼)、意味合い(観念)が似ている「類似範囲」にまで及びます。
例えば「ソラ」「プロ」「ラボ」「テック」「ケア」「リンク」など、よく使われる語を組み合わせた名前は、文字が完全に一致していなくても、読み方が似ている(称呼が類似する)先行商標がすでに登録されているケースが多々あります。自社が使いたい名前そのものがなくても、その周辺の類似範囲に他者の権利がないかまで広く確認することが重要です。
ここで大事なのは、検索結果がゼロかどうかだけを見ないことです。近い商標がどの詳細分類(類似群コード)で登録されているのか、自社のサービスと顧客が混同しそうか、将来の展開で近づく可能性があるかを見ます。
(3)説明的すぎる名前は登録しにくいと考える
「短納期試作サービス」「地域密着相談」「安心ホームページ制作」のように、内容をそのまま説明するだけの名前は、顧客には分かりやすい一方で、商標登録では識別力が弱いと判断されやすい場合があります。識別力が弱いと商標登録の要件を満たさず商標登録することができません。
だからといって、分かりにくい造語だけが正解ではありません。説明語と独自語を組み合わせる、サービスの世界観を示す短い言葉を足す、読みやすいが一般語だけではない構造にするなど、顧客に伝わることと登録しやすさのバランスを取ります。ここが、攻めと守りを同時に見る実務です。
4.自分で判断しきれない境目を知っておく
(1)類似判断は「何となく似ている」では決まりません
商標の類似は、文字の見た目、読み方、意味合い、取引の実情などを総合して判断します。検索結果に近い名前が出てきたとき、「1文字違うから大丈夫」「読み方が少し違うから大丈夫」と自己判断するのは危険です。
反対に、検索結果が多いから必ず使えないとも限りません。分野が違う、指定商品・役務が離れている、全体として顧客が混同しにくいなど、専門的に検討すべき点があります。自分で行う検索は、あくまで候補を整理し、相談時の材料をそろえる作業だと考えてください。
(2)事業開始後の修正はブランド体験を壊しやすい
商標確認を後回しにすると、公開後にロゴ、Webサイト、印刷物、SNSアカウント、契約書、請求書を直すことになります。金銭的な負担だけでなく、顧客が覚え始めた名前を途中で変えることは、顧客のブランド体験の一貫性を損ないます。
新規事業では、早く動くことも大切です。しかし、事業開始前に、商標に詳しい弁理士に相談する材料を作ることで、後からの大きな手戻りを避けられます。完璧な名前を最初から作る必要はありません。危ない候補を早めに外し、育てる名前を決めることが目的です。
5.まとめ:名前は「伝える言葉」であり「守る資産」です
(1)候補名の確認はブランド設計の初期作業です
商標検索は、法務だけの作業ではありません。誰に何を約束する名前なのか、競合とどこが違うのか、従業員や取引先が説明しやすいかを確認するブランド設計の初期作業です。名前が整うと、営業資料、Webサイト、展示会トーク、採用メッセージにも一貫性が出ます。
(2)プロソラは候補名の整理から権利化まで伴走します
プロソラでは、合同会社Prosoraによるブランディング支援と、プロソラ知的財産事務所による商標・知財支援を連動させています。ブランドコンセプトの構築、ブランド名の創出サポート、指定商品・役務の詳細分類の特定、商標調査、商標出願~商標登録まで、攻めと守りを分けずに進めることができます。
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