商標の調査を弁理士に依頼することはできますか?
環境に優しい製品を売りにしている企業として、その理念を反映した商標を登録したいのです。商標の調査を弁理士に依頼できますか?
商標の調査にあたっては、
・弁理士ってどんな人?
・商標調査を弁理士に依頼するのは何がメリットか知りたい。
・逆にデメリットになることがあるか知りたい。
と思うことがありますよね。以下に商標調査を弁理士に依頼する際の考え方について解説します。
1.弁理士って何をする人?
知的財産のプロ
弁理士は、知的財産権の専門家。特許・意匠・商標などの権利を取得し活用することをサポートする役割を果たします。企業が創り出すアイデア・技術やデザイン、ビジネスに用いるネーミング・ロゴマークなど、企業の価値ある知的財産を守るプロフェッショナルです。
特許庁への手続き等を行う
弁理士は、特許庁への出願や特許庁の審査結果に対する対応など、知的財産の多種多様かつ複雑な手続きを行う専門家。特許庁への手続きを経て、特許・意匠・商標などの権利を取得することができるのです。
特許庁への手続きは非常に複雑で専門的なものであるため、誤りなく手続きを行うためには、知的財産の深い知識と経験が求められます。また、特許庁への出願手続等を代理できるのは弁理士だけと法律で決められています。
2.弁理士の商標の仕事とは
商標登録に必要な仕事は
商標登録には、次のプロセスを経る必要があります。
商標調査 ⇒ 商標出願 ⇒ 審査対応 ⇒ 登録 ⇒ 維持管理
特許調査は特許庁への手続きではありません。商標出願以後は特許庁への手続きです。
特許調査も特許庁への出願手続きも自分で行えますが、プロである弁理士に依頼して行ってもらうこともできます。
商標出願までのプロセス
相談・打ち合わせ(ヒアリング)
自分で商標調査を行う場合はこのプロセスは不要です。しかし、次の商標調査を行うために商品・サービスや商標をしっかり整理して特定する必要があります。
弁理士に依頼する場合は、弁理士と相談・打ち合わせをします。このプロセスでは、弁理士はクライアントからヒアリングを行って、クライアントの事業の方向性を踏まえつつ商品・サービスと商標等を特定します。これが商標調査・商標出願の基礎情報となります。
商標調査
商標調査では、類似した商標が既に存在していないか確認します。このステップは極めて重要です。商標出願する商標が登録できそうか確認するとともに、その商標をビジネスで使用したときに他社の商標権を侵害しないか確認するためです。
類似した商標が既に存在している場合は、その商標の出願や使用は避ける必要があります。
出願書類の作成
商標出願の出願書類は、特許庁での審査の対象であるとともに、登録後は権利の範囲を示す重要な書類です。商標と商品・サービスを間違いなく記載するとともに、出願する者の情報なども正確に記載する必要があります。
出願した後に修正できない事項も多くありますので、専門家である弁理士に任せることがお勧めです。
商標出願
出願書類が完成したら、特許庁への商標出願を行います。出願時には、特許庁に支払う印紙代が必要です。また、弁理士に代理を依頼した場合は、弁理士に出願手数料を支払う必要があります。
商標出願後の対応
商標出願の後には、特許庁から補正の指示や、現状では登録できない旨の通知が届くことが珍しくありません。この場合、特許庁に対して意見書や補正書を提出して不備を解消する必要があります。
この対応は、専門的な知識や経験が必要であるため、弁理士に任せることがお勧めです。もし自分で商標出願まで行っていた場合でも、この時点で弁理士に代理を依頼することもありえます。
3.商標調査について弁理士のサポート
商標調査が一番重要
商標登録までのプロセスでは、最初の商標調査が一番重要です。その理由は3つあります。
権利の漏れを無くす
商標出願する商標が登録できそうか確認するためです。商標は商品・サービスごとにとるものなので、商標を使用する商品・サービスを漏れなくおさえておく必要があります。
これに漏れがあると、自分のビジネスの商品・サービスの一部が商標権による保護範囲に入らないことになるのです。こうなると、その商品・サービスに他社が同じか似た商標を使用しても文句を言えないことになってしまうのです。
他社の商標権を侵害してしまうことを未然に防ぐ
ビジネスで商標を使用したときに他社の商標権を侵害しないかを十分に確認しておく必要があります。
この確認が不十分なまま他社の登録商標に同じか似た商標を使ってしまうと、その他社の商標権を侵害してしまうことになるからです。侵害が生じるとその他社から訴えられる場合も生じます。この場合は訴訟の対応費用など高額な費用がかかることになります。
審査対応を軽くする
十分な商標調査を行って、商標出願した場合は特許庁の審査を無事に通過する確度は飛躍的に高くなります。こうなると審査での対応は必要ないかごく軽く済むことになるのです。
そうではなく逆に、商標調査が不十分なために、そもそも無理すじの商標出願や間違った商標出願をした場合には、審査での対応は、たとえ弁理士であっても不可能な場合もあります。
商標調査でのチェックポイント
商品サービスの特定
どの商品やサービスに商標を使用するか明確に特定し、特許庁が定めている区分や商品・サービス名(類似群コード)との対応関係を整理する必要があります。
商標の特定
どんな商標を使用するか、つまり、通常の標準的な文字なのか、デザイン化した文字なのか、図形なのか、を明確に特定します。
他社の先行登録商標の検索
上記の特定の上で、特許庁で既に登録されている同じか似た商標(先行登録商標)がないかを確認します。
識別力の確認
その商標が商品・サービスの普通名称や単なる品質名であるなど、他者の商品・サービスと区別できる能力(識別力)があるかを確認します。識別力の無い商標は特許庁の審査を通過できないからです。
その他
特許庁に登録されていないが世の中ではよく知られている商標がないかを調査します。このような商標と同じか似た商標を出願しても、特許庁の審査を通過できないからです。
また、世の中の有名なネーミングやマークと同じか似た商標を出願すると、たとえ商標としては法律上の問題がなくても、ネット上で炎上してしまうこともありえますので、注意が必要です。
自分で調査しても大丈夫か
自分で調査する場合
自分で調査する場合、商標調査の費用はかかりません。一方、時間と労力がかかるほか、専門的な知識がないことによって商標の権利が上手く取れない場合があるという点には留意する必要があります。
弁理士に依頼する場合
弁理士に依頼することで、労力と時間を節約し、専門的な調査により商標登録までのトータルコストを抑制することが可能です。その商標がビジネスの重要な一部である場合、弁理士のサポートを受けることを強くお勧めします。
4.弁理士の選び方
商標登録のプロセスは、多くの専門的な知識と経験を必要とします。そのため、弁理士の選び方も非常に重要です。以下のポイントに注意して弁理士を選ぶとよいでしょう。
弁理士の専門分野
弁理士には様々な専門分野があります。特許、意匠、商標、著作権など、知的財産やその保護に関する業務は多岐にわたるため、それぞれの専門分野を持つことが多い状況です。
商標専門の弁理士
商標を得意とする専門知識・経験を持つ弁理士もいます。選ぶ弁理士は、業績、評判、費用なども考慮しつつ、あなたのニーズに合う弁理士を選ぶことをお勧めします。
5.まとめ
以上解説しましたとおり、商標を登録するためには、最初の商標調査をしっかり行うことが、後々の費用がかからない為にも必須です。
また、商標調査やその後の手続は、自分で行うこともできますが、間違いなく商標出願を行って特許庁の審査を通過するためには、商標の専門知識・経験が必要であるため、トータルコストを考慮すると、商標を得意とする弁理士に依頼されることをお勧めします。